KYS:019

鷹の井戸

本文:16ページ
価格:800円(税別)

[楽曲解説]

 アイルランドの国民的な詩人W.B.イエーツは、アメリカの美術研究家アーネスト・フェノロサが日本滞在時に翻訳した能に感化され、能を意識した舞踊劇の連作を4作書き上げる。そのうちの1作がこの「鷹の井戸」であり、その創作に協力したのが日本人の舞踊家、伊藤道郎であった。余談だが、伊藤は同じ頃に グスターヴ・ホルストに舞踊音楽を委嘱しており、ホルストは書きかけの「惑星」を中断して「日本組曲」を書いている。1916年のロンドンにおける「鷹の井戸」の初演時には衣装などを手がけたエドマンド・デュラックが音楽も担当したらしいが、のちにニューヨークに渡った伊藤が「鷹の井戸」を再演するにあたり、ちょうどニューヨークに滞在していた山田耕筰に新たな音楽を委嘱する。2人はすでに旧知の間柄であり、この委嘱を快諾した山田は、カーネギーホールでの演奏会が目前にせまる中にあって、かなりの短期間 に5曲からなる連作を書き上げる。非常にシンプルな伴奏は、舞台上に設置したハープによる伴奏を想定したものであり、いたずらに音符を詰め込むことなく、音の間(ま)を活かした、幽玄な音楽となっている。舞踊と音楽との関係を見つめ、試行錯誤を続けてきた山田ならではの優れた作品であるといえよう。なお、イエーツの「鷹の井戸」は、その後日本に逆輸入され、「鷹姫」という新作能(能本作者:横道萬里雄、曲節作:観世寿夫)になっている。

「鷹の井戸」

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