KYO:003
舞踊交響曲《マグダラのマリア》
Choreographic Symphony“Maria Magdarena”
演奏時間:18'00''
編成:3 Fl. (3rdはPic.持ち替え)- 3 Ob. - E.hrn. - 2 Cl.in A(in Bbに持ち替え) - Bass Cl.in Bb - 3 Bn. - Double Bn. - 4 Hrn(in F) - 4 Trp.in A(in Bbに持ち替え) - 3 Trb.- Tuba. - Timp. - 2 Hrp. - Snare Drum - Bass Drum - Cymbal - Tam-tam - Triangle - Tambourine - 5 Strings
レンタル使用料:60,000円(税別)
ミニチュアスコア(販売):1,800円(税別)
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[楽曲解説]
小山内薫や石井漠らと総合芸術運動を企てていた山田耕筰は「舞踊詩劇」という大規模で劇的な舞踊舞台の構想を立て、メーテルリンクの同名戯曲に基づいて音楽制作を始めた。その後どのような経緯でこの構想が中断されたのかは定かではないが、最終的に『マグダラのマリア』は「舞踊詩劇」から第2幕の音楽を中心に再構成し、舞踊交響曲の冠を付した形で完成され、1918年10月にカーネギーホールにおける自作演奏会において初演された。ハープ2台を含む大編成のオーケストラを採用しながら、強弱や音色のめまぐるしい変化など、室内楽風にも見えるような非常に繊細なスコアリングが施されている。また山田の他の管弦楽作品にしばし見られるゲネラル・パウゼはこちらにも確認することができるが、もともとの構想が舞踊であったことを鑑みると、舞踊の動きに変化を付ける“きっかけ”の名残であるのかも知れない。初期の交響詩などから見られるようになる、前衛的な和声感覚などは、この作品で一層先鋭化しており、既に機能和声的な処理はほとんど見られなくなっている。リヒャルト・シュトラウス、スクリャービン、ドビュッシーらの影響は認められるものの、彼らの書法を自分の血肉として取り込み、そこから山田独自の色を出すことに成功している。東洋の片隅からこれほどの作品をひっさげて登場された、アメリカ聴衆の反応がぜひとも知りたいところである。少なくとも、日本という枠を越え、山田が当時の世界の楽壇の中にあって、トップクラスの才能を持っていたことはこの作品からも十分理解し得たのではないだろうか。
本作品の自筆譜は早い段階から失われている。その後1937年にベルリン・フィルハーモニーなどで演奏した際には、おそらく残されたパート譜から再構成されたであろうスコアを使用したものと思われる。しかし現在はそのようなスコアもなく、第一法規出版から刊行された山田耕筰全集に収録するために、再度パート譜から再構成されたスコアのみが残されている。ただし、このスコアは誤りが多い上に、打楽器パートが一切落ちているなど、信用に足るものではない。
本稿は1918年にカーネギーホールで使用されたパート譜やその後の再演などに使用されたパート譜を中心に版を制作。2004年の日本楽劇協会主催のコンサート「山田耕筰の遺産〜よみがえる舞踊詩〜」において矢崎彦太郎指揮、東京シティフィルハーモニックによって蘇演された。その後さらに細部における検証を重ね、2005年に湯浅卓雄指揮、東京都交響楽団によってNAXOSレーベルにレコーディングされた(NAXOS:8.557971J)。
コンサートだけでなく、振付を施すことでバレエ音楽としても効果抜群の作品。