KYO:002
交響曲ヘ長調《かちどきと平和》
Symphony in F “Triumph and Peace”
演奏時間:30'00''
編成:2 Fl. - 2 Ob. - 2 Cl.(in Bb) - 2 Bn. - 2 Hrn(in F) - 2 Trp.(in Bb) - 3 Trb.- Timp. 5 Strings レンタル使用料:90,000円(税別)
ミニチュアスコア(販売):2,800円(税別)
※楽曲の普及を促進するため、第1楽章のみのレンタル(30,000円(税別))も受け付けております。
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[楽曲解説]
1912年、ベルリン留学中「序曲」を完成させた後に、卒業制作として作曲された作品で、日本人による初めての交響曲となった。「君が代」の一部を取り込んだと言われる序奏の主題は弦のユニゾンで雄大に開始されるが、その様はまさに日本の夜明けを象徴しているようで、非常に感動的である。初演は帰国後の1914年に作曲者の指揮により行われた。「かちどきと平和」はその際に付与されたものと推定される。
作曲当時の自筆スコアは既に失われており、現在残されているのは第三者が作成した筆写譜、折に触れて作成された数種類のパート譜のみである。そのほとんどは近代音楽館に保存されているが、演奏を目的とした貸出はされていないのが現状である。
その後1997年に刊行された「山田耕筰作品全集第1巻(春秋社刊)」内で、初めて出版譜(スコアのみ)として登場した。作曲されてから実に85年後の初出版である。ただし、序曲と同じくパート譜はなく、パート譜資料を主資料として自筆譜(初校)の復元を目指した校訂方針は、多くの疑問箇所をも内包したものとなっている。しかし衆目に触れるという意味において大変な功績であると、校訂、出版を敢行した諸氏の業績を讃えたい。本稿もその基にこの春秋社版を置いていることはいうまでもない。
本稿では、全集版における前述の諸問題をについて一定の解決を図るべく校訂を進めていったものである。さらに、この作品の初レコーディングを敢行した指揮者湯浅卓雄氏が使用した総譜、パート譜を参照した他、2005年の「山田耕筰の遺産」コンサートにおける再演時に発見された新たな訂正も活かされている。
作曲されてから約94年を過ぎ、未だ演奏回数が初演から15回前後しかないという、憂慮される現状が、本稿の登場によって少しでも明るいものになることを願ってやまない。大変明解な書法に寄っているため、アマチュア・オーケストラなどにも手軽に楽しめる一曲。
■第1楽章 モデラート - アレグロ・モルト
前述のように「君が代」の一部をモチーフにした序奏の主題がそのまま主部アレグロ・モルトの第1主題となる。均整の取れたソナタ形式。
■第2楽章 アダージョ・ノン・タント・エ・ポコ・マルシアーレ
行進曲風と銘打たれているが、穏やかで大変美しいアダージョ。ヴァイオリンに現れるテーマが、他のエピソードを挟みながら変奏されていく。ベートーヴェンの第9交響曲の第3楽章を彷彿とさせるアダージョ。
■第3楽章 ポコ・ヴィヴァーチェ
古典的でシンプルなスケルツォ。流れるようなメロディーとシンコペーションのリズムを効果的に組み合わせ、スラヴ的な素朴さを楽しむことができる。トリオ部分の美しさにはほんのりとシューベルトの影が見え隠れする。
■第4楽章 アダージョ・モルト - モルト・アレグロ・エ・トリオンファンテ
ブラームスの交響曲第1番のフィナーレを彷彿とさせるハ短調の序奏からトランペットの輝かしいファンファーレに導かれて“堂々として”と注記された主部に入る。シンコペーションなどのアクの強いリズムを大胆に使いながら、歌心たっぷりのメロディーもふんだんに盛り込まれており、演奏効果抜群の壮大なフィナーレ。