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KYC:003
母の子守歌/野薔薇/からたちの花
価格:800円(税別)
[楽曲解説]
まず初めに「からたちの花」が歌曲によるパラフレーズの第一弾として1928年に書かれ、3月に出版。原曲の静謐な空気はしっかりと維持されながら、作曲者ならではの自由な発想から独奏ヴァイオリンにかなり活躍の場を与えている。終結部にはカデンツァもついており、なかなか弾きごたえのある内容。その後、20世紀前半に活躍したヴァイオリニスト、エフレム・ジンバリスト(江藤俊哉氏の師でもある)のために「母の子守歌」が同年の4月に書かれ、7月には「野薔薇」が手がけられた。後者は自作の「野薔薇(三木露風詩)」にシューベルトの「のばら」のメロディーを隠し絵のように織り交ぜた、小粋なアレンジになっている。 以下は「からたちの花」の出版譜の扉にはしがきとして書かれた作曲者のコメント。これを読んで頂ければ、作曲者がどの点の留意してスコアをまとめたのかがお分かり頂けると思う。 ********** 北原白秋氏の原詩「からたちの花」に私が作曲したのは四年ほど前と思います。私はこの曲が今日ほどの流行を見るものとは思っておりませんでした。今、私は各方面からの熱烈なる希望と懇願とに促されて、原曲をヴァイオリンの独奏曲に改編しました。 それが独奏のためへの楽曲であれば、伴奏も自ずから異なってこなければならぬものであります。従ってこの改編曲の伴奏は「からたちの花」の原曲とは格段に複雑化されております。 私は一方に、私の曲を広く演奏されるのを喜ぶと共に、それが単なる流行にとどまるならばまだしも、正しからざる趣味を、国民のうちに注ぎ込むことを憂うるので、この編曲に際してもよき趣味に於いて整えるために十分の力を注いだつもりであります。 しかし、この独奏部を書かれたまま演奏し得ない初歩の人々で、しかもなおこの楽曲を奏でたいという欲求を持たれる方もあると思います。そういう人々のために、私は、この曲の独奏部がただ単なる旋律のみの演奏によっても相当効果を挙げ得るように編んだつもりであります。ただし、初歩の方々は「×」以後のCadenzaの部分の演奏を差し控えられた方がいいと思います。そして「*」のある、次の小節の第3拍目から再び始めて、終わりまで演奏されたらよかろうかと思います。 (中略) 私はこの曲を出発点として、我が国に広く、愛好されている歌曲その他を、こうした形式に編み直して、今後とも続いて発表したいと思っております。
昭和三年三月 山田耕筰
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[楽曲解説]
まず初めに「からたちの花」が歌曲によるパラフレーズの第一弾として1928年に書かれ、3月に出版。原曲の静謐な空気はしっかりと維持されながら、作曲者ならではの自由な発想から独奏ヴァイオリンにかなり活躍の場を与えている。終結部にはカデンツァもついており、なかなか弾きごたえのある内容。その後、20世紀前半に活躍したヴァイオリニスト、エフレム・ジンバリスト(江藤俊哉氏の師でもある)のために「母の子守歌」が同年の4月に書かれ、7月には「野薔薇」が手がけられた。後者は自作の「野薔薇(三木露風詩)」にシューベルトの「のばら」のメロディーを隠し絵のように織り交ぜた、小粋なアレンジになっている。
以下は「からたちの花」の出版譜の扉にはしがきとして書かれた作曲者のコメント。これを読んで頂ければ、作曲者がどの点の留意してスコアをまとめたのかがお分かり頂けると思う。
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北原白秋氏の原詩「からたちの花」に私が作曲したのは四年ほど前と思います。私はこの曲が今日ほどの流行を見るものとは思っておりませんでした。今、私は各方面からの熱烈なる希望と懇願とに促されて、原曲をヴァイオリンの独奏曲に改編しました。
それが独奏のためへの楽曲であれば、伴奏も自ずから異なってこなければならぬものであります。従ってこの改編曲の伴奏は「からたちの花」の原曲とは格段に複雑化されております。
私は一方に、私の曲を広く演奏されるのを喜ぶと共に、それが単なる流行にとどまるならばまだしも、正しからざる趣味を、国民のうちに注ぎ込むことを憂うるので、この編曲に際してもよき趣味に於いて整えるために十分の力を注いだつもりであります。
しかし、この独奏部を書かれたまま演奏し得ない初歩の人々で、しかもなおこの楽曲を奏でたいという欲求を持たれる方もあると思います。そういう人々のために、私は、この曲の独奏部がただ単なる旋律のみの演奏によっても相当効果を挙げ得るように編んだつもりであります。ただし、初歩の方々は「×」以後のCadenzaの部分の演奏を差し控えられた方がいいと思います。そして「*」のある、次の小節の第3拍目から再び始めて、終わりまで演奏されたらよかろうかと思います。
(中略)
私はこの曲を出発点として、我が国に広く、愛好されている歌曲その他を、こうした形式に編み直して、今後とも続いて発表したいと思っております。
昭和三年三月 山田耕筰